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2009/08/07 (Fri) かばん2008年6月号 1/5

【はじめに】
独断に基づいて選んだ、好きな歌を批評します。
原則、冊子の状態に従います。
そののちに退会した会員の方の作品も、(当時の)会員作品として扱います。
改名された方も当時の名前で掲載させていただきます。
誤字脱字があった場合は、コメントでご一報くださると非常に助かります。

1.
待ってって言うのに傘は置いてくし新玉ねぎはすぐに煮えるし
                   本田瑞穂 「手を伸ばす」より
まず、言いさしの表現が成功していると思う。言いさしの表現により、作中主体が愚痴をはいているような、独り言をはいているような感覚を読者に与えている。
また「し」の繰り返しにより、リズムや積りゆく感情をかもし出している。
歌の表現においても、新玉ねぎのモチーフが生活感や透明な色合いを出し、全体を引き締めて味をつけることに成功しているように感じる。
全体的に、諦めのような切なさを感じる歌であると思う。


2.
最後まで言えなかったよ肉じゃがはじつはあんまり好きじゃないって
        辻井竜一 「ロストチャイルド・イン・ザ・ユートピア」より
肉じゃがは女性側からは勝負メニューとして認知されているが、男性側は実はそうでもないという話を聞いたことがある。
不意にそんなエピソードを思い出してしまった歌。
肉じゃがをはさんで、作中主体と言えなかった相手のすれ違いを感じる。
歌だけで判断はできないのだけど、肉じゃがのような些細なことが積り重なって「最後」になってしまったのだろうかとも思える。
ありそうなことなのだけど、ありがちで終わらない不思議な歌だと思う。


3.
「いい意味で愚かですね」とコンビニの店員に言はれ頷いてゐる
                    山田航 「世界に透かす」より
はっきり言って、現実では決してありえない光景であると思う。
けれどそのありえなさが、シュールさをかもし出している。
表現も、「コンビニ」という世界、「愚か」というあまり日常会話で使わない単語がドライな世界観をもたらしている。
また、それに応じる作中主体も頷く以外の動作が明示されていないため、淡々とした印象を受ける。
全体的に乾いた・淡々とした歌であると思う。


4.
正月しか見たことのない漫才師みたいに生きてゆけたらと思ふ
                    山田航 「世界に透かす」より
これも、非常にシュールな内容であるように感じる。
わかりやすさもあるけれど、同じくらいシュールである。
「正月しか見たことのない漫才師」と極端なデフォルメを施すことで、作中主体が羨望や悪意を込めて眺めているように見える。
また、感情を明示する表現がないため、突き放して傍観しているような感覚もある。これは「みたいな」のようなあいまいな表現や、「思ふ」のような想像の世界を示す言葉を使っているからかもしれない。


5.
20年4月現在係長のあなたが絶対知らない「おはよう」
             白辺いづみ 「追いつきたい」より
まず抱いた印象として、良い意味で言葉が鋭い。漢語の多用や体言止め、「絶対」という言い切りが効いているからだろう。
また、係長と作中主体の関係に緊張感を与えている気がしてならない。二人の関係は、ポジティブなものではなさそうである。
日時を明記したうえでの「現在」という表現も、それまで係長でなかった可能性や未来は係長でないという可能性を想起させる。
また、係長が絶対知らない「おはよう」を作中主体は知っている。そのことにたいする優越感もあるのではないかと考えられる。

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