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2009/08/08 (Sat) かばん2008年6月号 3/5

【はじめに】
独断に基づいて選んだ、好きな歌を批評します。
原則、冊子の状態に従います。
そののちに退会した会員の方の作品も、(当時の)会員作品として扱います。
改名された方も当時の名前で掲載させていただきます。
誤字脱字があった場合は、コメントでご一報くださると非常に助かります。
敬称は省略させていただきます。

11.
ちぎるなと書かれレモングラスの葉ちぎりてみればレモンの匂いす
                         杉崎恒夫 「指定席」より
<禁忌が示されていて、それを作中主体が破った、その結果何かが起きた>というシンプルな構図が活かされた歌であると感じる。
レモングラスの葉をちぎってはいけないといったタブーの結果が、「レモンの匂い」が漂うというものであった。
もちろん「レモンの匂い」に罪を重ねて読むのも妥当な解釈なのである。
しかし、私はレモンの匂いを考えるとどうしても爽やかさや軽さ、そこからあっけなさを想像してしまう。タブーの結果は、実にあっけないものであったのではないのだろうか。前述の構図からもそれが想起できるのではないのだろうか。


12.
等式の疲れをながむ左辺よりくずれてゆけば吐く否定律
                   石井浩 「はかなし」より
イメージがなめらかにまとまっている印象を受ける。「否定律」という単語は扱いによっては奇抜な印象を与えるのであるが、この歌では非常に重厚に全体を抑えているように感じる。
「疲れ」「くずれて」から、耐えられなくなって行くものの存在を、後半のひらがなの連続によってぼろぼろと壊れていく物の存在を感じさせる。
そして、結句がピアノの低音のキーのように歌全体に響いているのである。


13.
はじめての性交ののちの静けさに刻みそめたる夕浪涼し
 下坂武人 「今日も独りで―或いは菱川先生からの宿題」より
「はじめての性交」以前の期待と、「のち」の様子との対比が「静けさ」に収斂されている印象を受ける。
また、「静けさ」「夕浪」「涼し」という言葉から、音・時間帯・温度の全体から終わってしまったことへのあっけなさを感じずにいられない。
短歌で季語読みはしてよいのか悪いのかわからないが、「涼し」から全体的に夏の印象を受ける。


14.
浴槽に両脇の鰓とづるごとちぢまってしまふ老人たちは
        山下一路 「徘徊する老人たちの惑星」より
「鰓」は<えら>と読むことを初めて知った。知ってますます面白い歌だと感じた。
とにかくいい意味で不気味でシュールな歌である。前半の光景は迫力すら感じる。そこに「老人」を持ち込み動作を重ねることで、「老人」が人間以外の化けものめいた存在に思えてくる。
また、「ちぢまってしまふ」という言葉から、「老人」が小さい存在・卑屈な存在に思えてくる。


15.
焼け跡にとぢこめられしドアノブを鼈甲飴ですかし見てゐる
         山下一路 「徘徊する老人たちの惑星」より
「焼け跡」と「鼈甲飴」の色彩の重なりが美しく、ノスタルジックである。
「とぢこめられし」や「ドアノブ」も、どこか閉鎖的で懐古的な印象を受ける。
歌に直接触れられていない物語を想像させる歌であるように感じる。

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